堺市のチン電道沿いにお気に入りの和カフェがある。格子戸を開けると消毒液が置いてあるのはイマドキだけれども、開けた途端に頬を緩ませるお茶の香り。そう、お茶屋さんの店先でよく香るあの匂いだけれども、カフェの引き戸の向こうから漏れてくると、和テイストのインテリアの一部と思える。
メニューにコーヒーやラテ、オーレと言ったカフェの定番はなく(たぶん)、抹茶や煎茶、玉露が並ぶ。前回は抹茶をいただいたので玉露にしたけど、コレも正解。一煎目はお風呂でもぬるめの40度で小さめの湯呑みに既に入れてある。色は思ったよりも薄くで、安っぽいペットボトルのお茶の色と言ったところか。この見た目に裏切られる。
薄い色からは想像できないほどの濃厚な味わい、含んだ途端に抜ける香り、舌の上で主張を始める苦味、渋み、甘み、旨味。小さな湯呑みに納得してしまうように、濃く五感を刺激する。
二煎目は90度の熱湯を飲み切る量だけ注いで普通の大きさの湯呑みに注ぐ。かぶせ茶のように緑色も強い甘味もないけれど、渋さの出た美味しいお茶だ。葉の蒸らしを思ったが、別器に入れた一煎目からの時間経過で程よく葉は広がっている。急須を覗くと、よく知る茶っ葉ではなく、茎はおろか葉脈すら見当たらない。
三煎目でお菓子を食べて四銭目で口に残った甘味を流した後に、用意されたポン酢とお箸の意味を知る。
店員さんによると、急須の茶っ葉を少し取りポン酢をかけて佃煮のように食べるらしい。少し疑わしくはあったものの、白米を欲するほどには美味しかった。
最中もアイスも栗ぜんざいも美味しいのだけれど、抹茶や煎茶、玉露と相まって完成する和スイーツに、休日の心地よさを満喫した。