城崎にて

宿の前を電車が走る。時に華やかな特急電車に慌ててシャッターを切ろうとするけれど、デジタルは起動までに時間がかかる。
外湯まで送ってもらって、大渓川のほとりを浴衣でカランコロンと歩く。
風情という言葉を殊更に意識しながら、丹前から出した腕を前で組む。
カランコロン、カランコロンと慣れない下駄でバランスを崩しかけても風情を優先する。
御所の湯は開放感のある大浴場で温まる。
すると、昔よく見た風景が眼前に映る。
昔の銭湯でよく見た、けど見てないふりをした。
背一面の観音様の刺青。
タトゥーなんかじゃない、モノホンの入れ墨。
ああ、都会のスーパーな銭湯は入浴を許してくれないからね。風呂好きの紋紋さんにすれば老舗の温泉街は貴重なのかも知れない。
風情の一環だと、変に納得する。

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