ミニ物語3

ひとりでは何もできなかった。なのに、いつのまにかグループのリーダーになっているような子供だった。クラスの決め事があれば、特に何も発言しないのに何故か決定となる最後の一票役が回ってくる。特に発言しないのは、熟考しているのではなく何も考えていないからだ。回ってくるまで何も考えていないから発言もせずに直感で回答するのだが、それで雌雄を決する事になっても何故か文句を言われた覚えがない。

ミニ物語2

【王が産まれた日】

南の島で老婆が突然叫ぶ。「やっとぅあらわりてぃん」だが、その声を聞くものは誰もない、寂れた集落の外れだった。数十年前に神女と呼ばれたが、今は独り暮らしの老人に過ぎない。

再び眼を閉じ老婆は深い眠りにつく。

ミニ物語として。

【琉球返還】
1879年 琉球王国は消滅し沖縄県になった。
わずか66年後
1945年 カルフォルニア州になった。
27年を経て
1972年 日本に返還された。
そして数十年が経過した。
20××年 領海侵犯を繰り返す中国と争う事を嫌った日本が沖縄を切り捨て、琉球王国の独立を認容する。

怖いような嬉しいような。

末広がり

遅い夏休みを終えて、今日から日常だ。いつもの時刻に駅に着きいつもの電車に乗るはずだった。

下り電車の発車のベルを合図に滑り込む上りの電車だった筈が、ホームに上下線揃ってる。あれ?次の瞬間、閉まるドア。

あれ?乗り遅れた。仕方なく、次の電車を検索して驚いたのは、ここで4分の遅れが着駅だと9分の遅れだ。

しばらく考えて思う。

末広がりで縁起がいいじゃないか。

少し、無理がある。

浮かれてゴメンよ

少し遅い夏季休暇をいただいた。何をしようかと悩む。例年なら、比婆山に登っていた9月朔日。今年は、大阪ナンバーで出雲へ行くのは控えよう。車を停めるのは神社だけとは限らないから。

さて、どうしようか?夏休み。

お詣りしても許されそうな他府県。電車で手頃な距離。

全ての状況を整えて、「しまかぜ」に乗れるのが嬉しい。

さて、その前に妻の日々をお手伝い。毎朝介護に出る妻に僕のできる範囲でお手伝い。

あれ?なんで途中で下ろされてんだ?気持ちは嬉しいけどする事ないから、ここで待っていてって。妻の焦りながらも僕を気遣う言葉に、しまかぜに浮かれてるのが申し訳ない。

助け合いの光文字

毎年、成人式に合わせて、名護市の銭ケ森の斜面に地元の卒業生らが光文字を点灯させると記事で見た。「道」「命」「親」「愛」など30年以上続けられている行事らしいのだけれど、知らなかった。

住んだことのない遠い故郷が、今年はコロナ禍に「結」の文字を光らせた。

今こそ助け合い

そう意味を込めた文字らしい。