退職の節目にかつての後輩らが家まで届けに来てくれた一升甕。背には、金文字で記された僕の名と祝いの言葉が。
最も好きな忠孝の古酒が一番大切な盃の魚紋を泳がせる筈よ。
偶然でなく選んだ[忠孝]は僕の好みを知り尽くす、贈り人の想いが届く。
ところが、感動に震える僕に差し出されたDVDの表面には25年前の僕が熱唱していた。
してくれたのは、僕へのVideo Letter。
懐かしい顔が僕に話しかける。
口々に礼を言ってくれる。
オハコだった歌を教えてくれる。
照れ臭いくらい褒めてくれる。
決して順調でない経歴だけど、20年経っても自慢出来る種を蒔いてくれた。
このDVDに使われた時間は、何時間?何十時間?何百時間?
いったい何人の自由時間を奪って制作された?
お金だけじゃ作れないオンリーワンに、僕のやり方が間違ってなかったと、肯定された気がした。
嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しく嬉しくて嬉しくて嬉しくて。
無性にカラオケがしたくなったのに、彼らは『大成功』みたいな顔をして帰ってしまったけれど、嬉しかった。