以前、風に吹かれてホームを横切る空のペットボトルを、線路に落ちたら危ないと思いながらも、転がり始めた自販機前にいた親子連れや学生達、電車を待つ人びとの目を気にして拾わなかった。
事を、後で少し後悔した。
万が一、線路に落ちて危ない跳ね方をすれば、怪我をする人が出たかも知れない。
気弱さから徳を積み損ねた。
今日も迷った。その汚ないビニル袋は、ホームの端に立てられた柵に引っかかっている。
強風にバタバタと音を立てるビニル袋は待合席の前。子供、男性、女学生たちの前。
二度目の後悔はアホだと思い、席の前に出て袋を取り除いた。
近くにゴミ箱がないから、汚ないビニルは、とりあえずカバンに入れた。
やった、小さな徳を積んだぜ。
正しい事に勇気を必要とするようじゃ、情けないね。