義父が逝った日

一週間前に義父がこの世を去った。

5月に尿路感染による発熱でひと月ほど入院してから、瞬く間に身体は衰退した。
元々、スポーツマンで90歳を迎えても自転車に乗れた身体は自力で歩けないほど弱ってしまった。
車椅子に乗ってからは、色々なものに対する意欲を失ったようで、自分から発言する事が目立って少なくなった。だんだんと食欲も無くし、筋肉質だった足も痩せ細り、ベットに横たわる時間が増えてきた。

そんな時に、施設で発生したクラスターに巻き込まれて、さらに半月の入院を余儀なくされてからは自力で身体を起こす事も、食事を摂取する事すら出来なくなってしまった。
陰性となり施設に戻ったけれど、生命力が一気に失われたのは誰の目にも明らかだった。

数日のうちに父は逝った。
救いは、少しも苦しむ事なく、安らかな最期だった事だ。遠方に居る義兄も間に合った、孫もひ孫も間に合った、親しい親戚も間に合った。人の望みは叶うんだ、望めば叶うんだと感じてしまった。計りようもない程、徳を積んだ義父だからなのか。

お通夜、お葬式、初七日。淡々と済ませていく。父は解放された。
もう身体は痛まない。
また、歩ける、走れる。
父は、もう自由だ。

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